去る令和六年九月三日(火)別院真福寺に於いて、「埼玉第一教区教化研究会」が開催されました。今回は寺院のコンサルティングをなされている株式会社寺院デザイン代表取締役 薄井秀夫先生をお招きし、「お寺をめぐって何が起きているのか?その傾向と対策」と題して講義を賜りました。
まず、第一部では主に「葬儀の簡素化」と「布施金額の提示」が挙げられました。特にコロナ禍による一日葬の増加で「これでいいんだ」という思いになり、さらには通夜と葬儀で同じようなことを二回やる必要性があるのかという疑問をもつ人も多く、このままでは僧侶抜きの葬送になることも懸念されました。また、かつては地域社会や大家族などにより布施の目安を伝える社会システムが構築されていたが、もはやそれすらも存在していない。このような社会構造の変化は止めることはできず、今後も確実に進み、これは布教活動でなんとかできるものではないと断言され、今後私たちにとっての布教活動を根本から考えるきっかけとなりました。
第二部では「ワークショップ~ 自坊で何が起き、どんな対策があるのか」と題し、二組に分かれグループディスカッションを行いました。一日葬や墓地の継承者問題など、現実に起こっている諸問題を共有し、その原因を考えその対策を話し合いました。
休憩をはさんだ後の第三部では「解説・提案~原因・対策、これからのお寺はどうなる」と題し、先生から具体的なご提案がなされました。一つは、「寺院のトリセツ(取扱説明書)」を作成すること。そのガイドラインとしてお寺に対して、決して義務的なものではなく、安心して檀家を続けられるような内容であることがポイントとして挙げられました。もう一つは、通夜、葬儀の内容をわかりやすくすること。これは一昔前までは野辺送りなど、別れの儀式として死者をあの世に送る実感を持てました。しかしながら、現在は葬儀の意義がわからずにただただ傍観しているのが現状です。したがって通夜、葬儀では「説明と参加」が必要で、その具体的なご提案として、儀式が始まる前での説明や、解説を書いた紙を配布して説明することが挙げられました。特に今の時代において「紙に残す」ことの重要性も説かれました。
その後、質疑応答が行われ、参加者一同、先生の講義の内容を更に深めることができました。短い時間ではありましたが、現状の問題を共有し、その原因を探り解決するための具体的な方法を模索するきっかけとなる実り多き研究会となりました。
最後にこの研究会にあたり、ご多忙のなか講師をお引き受け頂いた薄井先生を始め、ご協力を賜った関係各位に感謝を申し上げ、ご報告とさせて頂きます。
(参加者)
渡辺道夫・高橋一晃・上村正健・山口純雄・片野真省・大津隆裕・小泉暁輝・江連俊隆・山口弘隆・榊原正蔵・元山弘寿・荒井勝哉
(地蔵尊院 江連俊隆)