去る八月二十五日(日)から翌二十六日(月)の日程で埼玉第一教区主催による「能登半島地震復興支援活動」を開催しました。埼玉第一教区を始め、東京南部教区・山川弘巳師、長野北部教区・瀬原深秀師、埼玉第八教区・木村教光師にも参加して戴き、教区の枠を超えて総勢十五名の住職・教師皆様の賛同を戴き、無事に開催する事が出来ましたので、ご報告いたします。
◆八月二十五日(日)
この日は金沢市内にて復興支援活動の事前研修として、①慰霊法要について②被災者に対しての傾聴活動について③復興支援の拠点とする珠洲市市長表敬訪問についての三点を同市内『喜はな』にて開催した。初めに渡邊道夫教区長より今回の復興支援活動の柱として、被災地において利他行を実践することの大切さが解かれ、大乗仏教の精神を体得する旨の話がありました。続いて高橋一晃参与から『臨床宗教師の立場から考える「被災地における傾聴」の意義』というテーマで翌日に行う被災者との傾聴活動に向き合う姿勢や心構えを丁寧に講義頂いた。傾聴活動の基本はとにかく相手の話を聞くこと、すべてを受け入れること、という高橋師の話を一同熱心に聞き、翌日からの復興支援活動に対する気持ちをより一層高める機会となった。
◆八月二十六日(月)
・五時二十五分
マイクロバスにて宿泊先のホテルを出発、内灘ICより“のと里山海道”を一路、珠洲市へと向かった。途中、西山PAにて休憩、徳田大津ICより一般道を経由、七尾市に入ると屋根にブルーシートを被せている家が多く、半壊、倒壊した家屋も徐々に多く見られるようになり、被災地に近づいている実感が湧いてくるとともに、被害の大きさを感じた。記録係として写真を撮影することが役割だが、被災された方々の気持ちを思うと安易にカメラを向けることはなかなか出来なかった。車中では、傾聴活動での被災者に対する向き合い方について高橋師から第二回目のご講義を頂いた。
・八時四〇分
珠洲市役所に到着、珠洲市の泉谷満寿裕市長との面会時間より早めに到着する事が出来たので、珠洲市役所駐車場に停車して車中にて会奉行の上村正健師より法要配役と次第の説明があった。
・九時三〇分
珠洲市長を表敬訪問、市長より、地震発生時の状況や、現時点での被災状況、家屋の倒壊数とこれまでの解体進捗状況、現在は復興に向けた街づくりの話し合いが行われている事などの詳しい説明をいただき、最後に渡邊教区長よりお見舞いの言葉とともに持参した義援金を市長にお渡しした。市長には過密なスケジュールの中、予定時間ギリギリまで丁寧に対応して頂いた。
・一〇時三〇分
今回の慰霊法要並びに傾聴活動の会場である珠洲市三崎町の『翠雲寺』に到着、大正大学同窓の縁でかねてより渡邉教区長と昵懇の仲である翠雲寺ご住職、岩尾照尚師自身も本堂や庫裏が大きく壊れる被害に遭い、現在は一部改修した庫裏で生活しながら寺を守っている。慰霊法要は二〇名を超える多くの檀信徒をはじめ、仮設住宅居住の皆様が参列する中、仮本堂にて厳かに執り行われた。導師・職衆一同、心の中に今回の震災で亡くなられた多くの御霊に対するご供養と、被災地の復興祈願を一心に念じながらお勤めさせて頂き、決して忘れることの無い時間となった。
法要終了後には檀信徒の皆様との記念撮影並びに翠雲寺ご住職と檀信徒代表の方へ教区役員並びに他教区諸大徳からの義援金を渡邊教区長が代表して、また圓應寺として山川弘巳師より義援金が手渡された。
法要の後、参列された檀信徒の方々と昼食を取りながらの傾聴活動を行った、天候が悪くなる予報が出ている中、雷鳴が轟き始めた為、傾聴活動方法の変更や、時間も当初より短縮となってしまったが、檀信徒の皆様が震災発生当時の事や地域コミュニティーの大切さ、辛い環境の中でも前を向いて歩んでいる事などを笑顔で話してくださり、この活動を実施できた喜びを感じる事が出来た。
傾聴活動の後には隣接する『須須神社』で毎年九月に行われている「寺家キリコ祭り」の際に夜通し街を練り歩く巨大な山車、『キリコ』を拝見させて頂くことが出来た。鉄骨構造の堅牢な造りで震災の影響を受けなかった倉庫に高さ約十六・五メートル、重さ約四トンの大きな『キリコ』が目の前に四基鎮座している姿は圧巻の一言で、束の間、自分が今、被災地に居ることを忘れるぐらい圧倒された。
・十二時五〇分
『翠雲寺』を出発、見附島並びに震災で被災された寺院二カ寺を岩尾ご住職に案内いただいた。
十三時三〇分見附島に到着、見附島は観光ガイドブックなどで見た姿とは大きく変化し、半島本土から見附島への道はほぼ水没しており、震災の爪痕をうかがわせた。弘法大師が布教のために佐渡から能登へと渡る際に発見した伝説の残る見附島を望む場所で参加者全員が心経法楽を行った。
・十三時四十五分
見附島を出発し、近くの『金峯寺』(曹洞宗)と『妙厳寺』(浄土真宗)の視察へと向かったが、その道中でも大きく倒壊している家々が多く見られ、地震の規模の大きさを改めて感じた。両寺院とも本堂や山門等、木造建築は大きく崩れ、辛うじて屋根の形だけが判別できる状態であった。
『妙厳寺』を視察した後、最後に岩尾ご住職からご挨拶を頂いた。ご住職は『今回は遠方より被災地にお越し頂きありがとうございました。先ほどの法要では、真言宗と天台宗が一体となって慰霊法要を勤修することが出来、皆様の読経で汗なのか涙なのか分からないものが溢れてきました』という大変ありがたいお言葉を頂いた。
十四時五分に『妙厳寺』を出発。
・十七時五分
金沢駅に到着、この二日間の反省会を経て、十九時二十一分発の『かがやき五一六号』に乗車、今回の現地での慰霊法要並びに傾聴活動等の復興支援活動を通して、今後も被災者に寄り添い、継続的な支援を続けていくことの大切さを感じながら帰路についた。
●法要配役 於 翠雲寺
導 師 隨泉寺 渡邊 道夫
一 﨟 回向 正源寺 荒井 真道
二 﨟 圓應寺 山川 弘巳
三 﨟 経頭 明王院 山口 純雄
四 﨟 正法寺 瀬原 深秀
五 﨟 金剛寺 木村 教光
六 﨟 地蔵尊院 江連 俊隆
七 﨟 東養寺 高橋 一晃
八 﨟 泉藏院中 山口 弘隆
九 﨟 錫杖寺中 江連 俊教
十 﨟 興照寺中 窪田 明収
十一﨟 正源寺中 荒井 勝哉
十二﨟 奠供 隨泉寺中 渡邊 美蓮
会奉行 実正寺 上村 正健
写真撮影 普門寺 小泉 暁輝
衣 帯
導師 色衣・地蔵袈裟・桧扇・皆水晶念珠
職衆 色衣・如法衣・夏扇・常用念珠
会奉行 色衣・紋白五条・中啓・半装束念珠
(記録 小泉暁輝)